ビジネスの場においては、言いにくいことを言わなければならない時もあります。
例えばかなり面倒な手続きをしてもらうなど、お願いをする時や、何かを断らなければならない時です。
言いにくいからと言ってうやむやにするわけにはいかないので、はっきり伝えつつ角が立たない言い方をする必要があります。
ここでは、ここのような緊張した場面で役立つ言葉や、かしこまった気持ちが相手に伝わる特別な言い回しについて考えます。
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クッション言葉を使おう
緊張した場面で役立つのが「クッション言葉」です。
苦情やクレームなどに対応することが多い、コールセンターでは、この「クッション言葉」を上手に使っています。
クッションが、様々な衝撃を軽減するように、このクッション言葉を入れることによって、相手の怒りや緊張を和らげることができます。
「恐れ入りますが」
何かお願いをする場面で使います。
例えば、怒って電話をかけてきた人に、担当者に変わるので待っていて欲しいという場合、保留にする前にこの言葉を入れることができます。次の通りです。
「〇〇様、大変申し訳ございません。すぐに担当の者におつなぎしますので、恐れ入りますが、しばらくお待ちいただけないでしょうか。」
「恐れ入りますが」という言葉が、上手にクッションの役割を果たしているのではないでしょうか。
迷惑をかけているのに、待たせてしまって申し訳ないという気持ちが伝わります。
「お手数をお掛けしますが」
これもよく使われるクッション言葉で、使える場面は実にたくさんあります。
面倒な手続きや処理をお願いする時など、文字通り相手に手数をかける時に適した言葉です。例えば次のように言えます。
「大変お手数をお掛けしますが、お送りした書類にご捺印いただき、返送をお願いしてもよろしいでしょうか。」
これは、メールで何か依頼をする時にも、文章の最後に使うことができます。
よく似た言い方としては「ご迷惑をお掛けしますが」があります。頭に「お忙しいところ」をつけても良いでしょう。
「せっかくでございますが」
これは、特にセールスを断るときに使える言葉です。
すでに前もって資料などが送られてきていて、社内で検討した結果断らなければならない場合や、飛び込みセールスで、最初から断ることが決まっている場合と状況は様々です。
しかし、この「せっかくでございますか」を使うことによって、せっかく案内してもらったのに(資料を送ってもらったのに)希望に添えず申し訳ないという気持ちが伝わります。
「断る」という場面でも気まずさを最小限に止めることができる便利なフレーズです。
「せっかくご足労いただいたのですが、社内で検討しました結果、今回は見送りとさせていただきたいと存じます。」
「差し支えなければ」
この表現は、何かを尋ねたい時に使います。特にそれを話すかどうかは相手の気持ち次第である場面には、このクッション言葉が役に立ちます。
定期購入をやめたいとか、担当者を変更して欲しいと言った内容は、その理由を聞くことが今後の対応で重要になるので、ぜひ聞いておきたいと思うものです。
しかし「どうしてですか?」と単刀直入に聞いてしまうと、相手の機嫌を損ねてしまいます。
このような緊張した場面では、先に挙げたクッション言葉との併用も有効です。
「恐れ入ります。差し支え無ければ、理由をお聞かせ願えませんでしょうか。」
この場合、相手は理由を話しても良いという気持ちになるかもしれません。
かしこまった気持ちが伝わる特別な言い回し
トラブルや、大切な会議など、緊張感に包まれた場所では、その場にいる人たちが言葉一つ一つにも過敏になっていることがあります。
そこでは、通常の丁寧語よりもさらにかしこまった言い回しを使うことで、相手の不安を解消し上手に乗り切ることができます。
「存じます」
これは、敬語上級者が使う謙譲語です。「知っている」という意味ですが、これを自分の話の中に自然に組み込むには、ある程度の経験が必要かもしれません。
しかし、この言葉を使うことで、自分の話す内容に重みと深みをプラスすることができます。
また、「思います」という意味でも使えます。「~したいと思います」を丁寧に言う方法です。
例えば「この件は、早急にご連絡差し上げたいと存じます。」とか「ご配慮いただき、ありがたく存じます。」と言った使い方です。
「いたす」
とても小さなことですが、自分が発する言葉の中の「します」を全て「いたします」と言い換えることで、かなりかしこまった印象を与えることができます。
「そのようにします」より「そのようにいたします」の方が、丁寧で安心感があります。
「お願いします」より「お願いいたします」の方が、頼まれた方も気分が良いでしょう。
火に油を注がない
緊張した場面では、敬語も含め言葉遣いに細心の注意を払わなければなりません。その時の対応で、状況は最初よりも悪くなる場合があるからです。
「聞いてない」とか「そう言うことにしましょう」と言う言葉は、言い訳と責任逃れに聞こえます。
もし、本当に聞いてないとしても、もっと違う言い方があります。そんな時に役立つのがクッション言葉です。
例えば、「恐れ入ります。私の確認不足で大変申し訳ないのですが・・・」と言って話を切り出せば、相手も冷静に話を聞いてくれるはずです。
また、「そう言うことにしましょう」と言うのも、本当は自分は悪くないのに・・・と言う気持ちがたっぷり込められていることが相手に伝わる言葉です。
「そう言うことにしましょう」と言う代わりに、「私の確認が十分でなかったかもしれません。」と一歩引くことで、その後の会話が建設的になります。
まとめ
こうして考えると、言葉遣いは本当に大切です。人に喜怒哀楽があるように、ビジネスシーンにも様々な場面があるからです。
どんなにビジネス上の付き合いだと言っても、やはり人と人の付き合いに変わりはありません。
何かを依頼したり、緊張した場面では、すぐに自分の要求を伝えるのではなく、一旦立ち止まり、使えるクッション言葉をプラスすることを忘れないようにしましょう。
ピリピリした場面では、かしこまった表現を使うことで、みんなを安心させます。
自分は悪くなくても、その気持ちを抑えて、一歩引いた表現を使うことで場を和ませましょう。
正しい敬語には、マイナスな状況をプラスに転向させる力があるのです。

